シニアのグランプリシリーズも始まり、いよいよ本格的に始まった“オリンピック・イヤー”。残念ながら、今シーズン限りでの引退を表明している選手も多数います。
 しかし勿論、フィギュアスケートがソチ五輪をもって終わってしまうわけではありません。
 寧ろ、その後こそ“フィギュアスケートという競技”がより一層面白くなると、私は感じています。

 ご存知エフゲニー・プルシェンコ選手や、ブライアン・ジュベール選手。
 “シニアのカテゴリに上がった時は、まだ6.0システムだった”時代の選手です。彼らはIJS(ISU Judging System)の導入以降、年ごとに変わりゆくルールに適応しながら、これまでトップの舞台に立ち続けてきました。高橋大輔選手も、世界選手権に初めて出場した時はまだ6.0システムでした(グランプリシリーズでは現行法)。
 彼らが引退することにより、“6.0時代を知る”選手や“6.0とIJSの間で試行錯誤をする”選手が表舞台からはほぼいなくなり、ひとつの時代に区切りがつくと言っても良いでしょう。
 その少し下の世代、現在20代前半の選手達は、“シニアに上がった時は、既にIJSが採用されていた”時代の選手がほとんどになります。彼らはルールに適応する事に(勿論大変な事ですが)慣れています。
 しかし、ノービスやジュニアの時代にはまだ6.0システムだったという選手も、中にはいます。

 私が注目するのは更にその下、現在はまだジュニアの舞台にいる選手達です。
 アメリカのネイサン・チェン選手や中国のボーヤン・ジン選手、女子であればロシアのユリア・リプニツカヤ選手やエレーナ・ラジオノワ選手など……そしてもっと下の世代の選手たち。
 彼らはスケートを始めてから、“試合に出る年齢になった頃には、とっくにIJSになっていた”、言わば「IJSネイティブ世代」の選手です。日本で言えばバッジテストの無級や初級・1級でしょうか。
 長所や改善すべき点を明確に示され、試行錯誤をしながら成長を続けていく事が板についており、そして技術の吸収や成長もちょうど著しい世代です。
 ルールに対応していく中で、そしてより良いものを見せるために成長していく。
 彼らがシニアに上がってきた時。ちょうど2018年平昌五輪の頃、フィギュアスケートの技術レベルは、今よりも更に高いものとなるでしょう。誰か一人が強いのではなく、平均レベルがとても高い。そんな世界になると思います。

 今スケートを見ている方へ。応援している選手が今シーズン限りで引退してしまっても、どうかフィギュアスケートという競技を見続けてほしい。
 そして、報道関係者の方へ。最注目選手が引退した後も、どうかフィギュアスケートという競技を見捨てないでほしい。
 私一人がこんな所で書いたところでどうにもならないとはわかっていても、そう願わずにはいられません。