「フィギュアスケートはスポーツか?芸術か?」
 という議題は随分以前から取り沙汰され、そして議論されてきました。
 私も私なりに考えて、そして結論から申し上げると
「スポーツでも芸術でもある(どちらでもない、というわけではない)。厳密に言えば【限りなく芸術に近いスポーツ】である」
 ということです。
 というか、スポーツか芸術かのどちらに該当するかなんてハッキリ決める必要はあるのか?という。

 フィギュアスケートの成り立ちは“氷に描いた図形(フィギュア)の美しさ”を競う、【芸術】でした。その後、ジャンプやスピンなどの要素が入ったり、果てに図形の正確さを競うコンパルソリーが廃止されたりもしていますので、その点では現在は【スポーツ】と言えます。
 今日の採点法においては、ジャンプ・スピン・ステップシークエンスがあり、それらの要素の内容によって技術点が出ます。
 片や演技構成点はCH(振付)やIN(音楽との調和)といった芸術的要素が含まれる一方で、SS(スケーティング技術)やTR(要素間のつなぎ)といった“技術点には反映されていない技術的な部分”の採点もされます。PE(演技力・遂行力)はそのちょうど中間といったところでしょうか。
 上記が、私が【限りなく芸術に近いスポーツ】と考えた理由です。

 たとえばバレエに技術点というものはありません。芸術性のみで評価される、その点ではまさに【芸術】です。
 しかし、その芸術性の裏には高い技術力があってこそ。バレエダンサーの鍛えあげられた肉体を見ていると、バレエは【スポーツに限りなく近い芸術】なのだと感じさせられます。

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 ここからは余談ですが……

 フィギュアスケートと同様、新体操やシンクロナイズドスイミングも、“音楽に合わせて踊り、その中で技を披露していく”競技です。
 もしこれを機械的に(もしくは機械が)採点するなら、これらの競技に含まれる“音楽との調和”という項目は、ぶっちゃけ必要ないと感じます。
 ※極論を言ってしまえば……:
 これが純粋に技術だけで争われるスポーツだとしたら、要素をどんどん決めていけばいいし、その中に難しいものがあればもっと良いよねとなるわけで、音楽の調和どころか、そもそも音楽は必要でしょうか?

 時に「芸術性を採点すること自体がナンセンス」と言った意見や記事も見かけたりします。
 しかし、様々な国籍や価値観の人間が複数人数で芸術性に関する採点をするからこそ、どうしてもそこに人間的な主観や思惑があるからこそ、フィギュアスケートはフィギュアスケートとして、新体操(Artistic Gymnastics)は芸術的な体操競技として、シンクロナイズドスイミングはシンクロナイズドスイミングとして、生きてくる競技なのではないでしょうか?
 同様に時に見かける「◯◯選手には芸術性が感じられなかった」と書かれた記事については、そこに同意するものでもなければ、非難するものでもないと思います。
 その演技には心が打たれなかった、芸術性が感じられなかったのも、数多くの人が抱く“主観”のうちの一つにすぎないのです。