ソチ五輪も佳境ですねー。
ときに、フィギュアスケートの採点というのはえらく複雑なもの。
ルールを勉強すれども、時として「なるほど、わからん!」となるのも本音。
特にアイスダンスはめちゃくちゃ難しいです。フリーフットの位置って何やねん。
でも、細かいことを気にせず「この辺を知ってると楽しい!」
「高い点が出る選手は大体こんなことをしているのか!」
というツボを、テレビをだらだら見ながら観戦するときの参考にしてもらえば。
無茶苦茶な文章ではありますが、楽しんで読んでいただければ幸いです。
……自分がわかっている範囲なので、ペアとアイスダンスについてはあまり触れていません。
いずれこの辺りについても書けるといいなぁ。
ときに、フィギュアスケートの採点というのはえらく複雑なもの。
ルールを勉強すれども、時として「なるほど、わからん!」となるのも本音。
特にアイスダンスはめちゃくちゃ難しいです。フリーフットの位置って何やねん。
でも、細かいことを気にせず「この辺を知ってると楽しい!」
「高い点が出る選手は大体こんなことをしているのか!」
というツボを、テレビをだらだら見ながら観戦するときの参考にしてもらえば。
無茶苦茶な文章ではありますが、楽しんで読んでいただければ幸いです。
……自分がわかっている範囲なので、ペアとアイスダンスについてはあまり触れていません。
いずれこの辺りについても書けるといいなぁ。
■得点の出方
┌ 技術点 ┐
要素の基礎点±GOE + 演技構成点 − 減点 = そのセグメントの合計得点
ショートプログラム(2分50秒以内:ジャンプ3個、スピン3個、ステップ1個)
フリースケーティング(男子4分30±10秒程度:ジャンプ8個、スピン3個、ステップ1個、コレオシークエンス1個)
(女子4分±10秒程度:ジャンプ7個、ほかは男子と同じ)
の2つを演技し、その合計得点で最終的な順位を競う競技。
かつて「6.0システム」と言われていた採点の時代はその性質上、5位の選手が逆転優勝という事はほぼ有り得なかったが、現在の採点システムでは得点差次第でひっくり返ることはままある。
実際、今回男子の銅メダル争いはまさにそんな感じだった。13位までがメダルを狙えるって。
逆に、ショートの貯金が活きてフリーはギリギリ逃げ切って優勝というのも、これまでに何度もある。
■審判団
・いろいろ用語が出てくるけど後で解説。
・テクニカルパネル:
テクニカルコントローラーをリーダーとして、
テクニカルスペシャリスト、アシスタントテクニカルスペシャリストを加えた3人。
ジャンプの回転数や回転不足にエッジエラー、それとステップやスピンのレベルを判定する。
判定は基本的に3人の多数決による。
・ジャッジ:
まず全ての選手の出場国から選出されたジャッジから抽選で13人、
そこから更に抽選でショートプログラムを担当するジャッジ9人が決まる。フリーでは、ショートでジャッジをしたうちから5人がまたまた抽選で引き続き、残りは↑で漏れた4人が入る。
彼らはGOEやPCSを判定し、それぞれの項目で一番高い・低い得点をつけたものがカットされる。
残り7人分の平均点が、最終的なGOEあるいはPCSの得点となる。
試合によってはもっと少ない人数でやることもあるが、五輪は9人。ジャッジの名前は公表されるが、誰がどの得点をつけたかはランダムになる(個人攻撃を防止するため)。
・他:
計時係、様々な判定をするためのビデオを出すリプレイオペレーター、審判団をまとめるレフェリーもいて、合計すると約20人。中々の大所帯。
■技術点(Technical Elements Score)
・要素ごとに、難易度によって“基礎点(Base Value)”がある。
・ジャンプは、同じ回転数なら
アクセル>ルッツ>フリップ>ループ>サルコウ>トウループ
という事を覚えておけばOK。何の種類かはとりあえず解説者さんに任せておけばいいし、見分け方などに興味があれば検索すればいくらでも出てくるので、ここで敢えて説明する必要もない。
・男子の華といえば四回転。今のところトウループが主流で、数人の選手がサルコウを入れてくる。
・女子のトリプルアクセルはそりゃもう当然の事ながら難しいが、トリプルルッツにトリプルのコンビネーションジャンプも十二分に難しい。難しい分リスクは高いが基礎点も高いぞ!
・ショートもフリーも、後半にジャンプを跳ぶと基礎点が1.1倍になる。
・得意だからと言って、何度も“同じ種類”かつ“同じ回転数”のジャンプばかりやるのは×。
もう少し細かい規定はあるが、選手が様々な種類のジャンプを入れてくるのはこのせい。
・回転不足:
ジャンプの入りのカーブに対して回転が1/4〜1/2足りないと“Under Rotated”といって基礎点の0.7倍になる。
1/2以上足りないと“Down Grade”として本来の基礎点から1回転少ないぶんの点になる。
実況や解説が「綺麗に決まりました!」と言ってても、ちゃんと見たら足りないなんてことはよくあるので、あまりアテにしてはいけない。特に高難度の技になると、アテにならないことのほうが多い。
国際舞台の第一線で活躍していた解説者さんですら間違えるんだから、素人が見てもわからないのは当然だ!
・ステップやスピンには“レベル”という概念がある。
最高レベルは4(最低はB、『Basic』のB)で、一つの要素の中で“レベルが上がるファクター”をこなせばこなすほど得点も上がっていく。
例えばスピンだと、バックエントランスとかチェンジエッジとかポジションの変更とか色々あるけど、これも割愛。
ペアやアイスダンスではリフトなどにも設定されている。というかジャンプとコレオシークエンス以外は全部レベル要素だ。
・メディアでは「最高難度のレベル4を獲得しました」とはよく言われるものの、
五輪に出てくるようなレベルの選手なら、ほぼ全員がレベル4を狙う構成にしている。なめたらアカン。だから色々細かい規定はあるけど、レベル4じゃなかったら「何かしら取りこぼしちまった」と思っていい。
※補足:
ただし、スピンの中でもレイバックスピンはレベルを取るのが難しく、特に腰や背中に故障を抱えていたり、体が元々硬くて難しいポジションが不可能な選手は、レベル3を前提とした構成で来ることも。
それでも巧みなエッジワークでレベル4を取る選手もいる。
・コレオシークエンスは「自由に音楽を表現する要素」。基礎点が固定で、GOE(後述)で点数が決まる。
女子はスパイラルを入れることが必須。
■GOE(Grade Of Execution)
・技の“出来栄え”を示すもの。その名の通り、技の出来如何で加減点される。
・+3〜0〜−3まで7段階あるが、別に+3がついたから即得点が3点プラスされるわけでもない。
要素ごとに係数が設定されている。細かいところは割愛だ。
・プラスになる要素:
高さや幅が十分、音楽構造に合っている、着氷が十分に流れている、入りや出が工夫されてる、
難しいターンやつなぎから入っている、独創的……などなど、色々あるけれど。
・とりあえずジャンプなら\ドーーーーーン!!/などという効果音をつけたくなったら良いジャンプだし、音が消えてブレイクした時にジャンプをピッタリ着氷したら超カッコイイし、たとえばリストの「愛の夢」でチャラチャラチャラチャラと音が降りていくとこでスピンしてたら綺麗だよね!
そんな感じで大体合ってる! 細かいところは気にするな!
・「他に真似できる人がいないほどにブッ飛んだ独創性」は高評価を受けやすい。
・マイナスになる要素:
転倒したり着氷が乱れたり。こちらにも色々ファクターは設定されているし、
その程度によっても減点の幅は様々だがやっぱりここでは割愛だ。
見た目明らかに「んあっ!?」と思ったらGOEがマイナスされる、それだけ覚えておけばいい。
・ジャンプを見た目とても綺麗に着氷したのに後から見てGOEがマイナスされていたら、
「そのジャッジの角度から見た時に回転が足りていたか微妙だった」
くらいの認識でいれば大体間違いはない。もしくは……↓
・ジャンプのうち、フリップとルッツには“エッジエラー”という可能性が潜んでいる。
右足でトウ(つま先)を突くのは同じだが、踏切の左足がインエッジなのがフリップ、逆にアウトエッジになっているのがルッツ。それが逆になってたら“Wrong Edge”だ。
程度によっても異なるが、それでもGOEがマイナスになる“かもしれない”。
“かもしれない”というのがミソ。
※注意!
「3回転●●の予定が2回転になってしまいました」と解説の方が仰る事もよくあるが、この予定がミスったからと言ってもGOEが必ずマイナスになるわけではない。
きちんと音楽に合ってたり綺麗に着氷が流れてたりすれば、プラスがつくことはよくある話。
(ショートプログラムでは規定があって、その回転数に満たなかったらGOEは-3固定)
ただ基礎点レベルでガクッと落ちてしまうので、「やったらあかん!」ミスにはなる。
※注意!その2
レベル要素の場合は、実際に取ったレベルとGOEは必ずしも一致しない。
明らかにヘロヘロでもレベル4はよくあるし(勿論GOEは渋いぞ!)
めっちゃ綺麗でもよく見たらポジションが甘くてレベル1や2…なんてこともよくある(加点はもらえる)
■演技構成点(Program Compornents Score)
・よくテレビ番組なんかでは“表現力”と言われるけど、割と……というか実はかなり語弊がある。
・実際は表現力と含めて、“技術点で表せない、要素以外の技術の部分”も一緒に明示化したものと言ったほうが良い。
・SS、TR、PE、CH、INの5項目で表される。それぞれ10点満点で0.25刻み。
・フリーではPCSの係数が2倍に。
・女子の場合はx0.8される(フリーでは最終的な計算はx1.6)。そうしないと、技術点よりも演技構成点の比重がドーンと高くなっちゃうので。
・ペアとアイスダンスの場合は項目によって係数が様々。
----------
●SS(Skating Skills)
・読んで字の如く、“滑走そのものの技術”。
・滑走するスピードもさることながら…
・何よりそのスピードをきちんと“コントロール”できているが大事(←とても重要!)
その選手が出せる最大のスピードを、きちんと制御すること。せっかく爆速で滑走してても、暴走して肝心の技を失敗したら意味がないのだ。
・片足で滑っている時間が長く、前進や後進をバランスよく滑っているほうが好ましい。
得意だから同じものをいっぱいやる(逆に苦手だからやらない)というのは良くない。
・スピードを出すための助走動作(“漕ぐ”と表現されることも)が少ないほうが良いなんて論調もある。
ある観点でそれは正しい(少ない漕ぎ数でスピードを出せるなら良い事だ)けど、ちと語弊がある。漕ぎが少なかったとしても、スピードが出てなかったらあんまり意味がないし。勿論、少ない助走動作で爆速が出せるならとても良いことだ。
・「スピードなんて言われてもテレビじゃよくわかんねーよ!」と思ったら、選手の背景やフェンスが流れる速度を見ていればわかってくるかもしれない。
・フィギュアスケートの原点はなんといっても“巧みなエッジ使い”。
よーく靴を傾けて膝を柔らかく使い、ディープエッジで滑走するのは技術が高い証拠。ウットリしよう。
(詳しく解説すると遠心力やら角度やら、突然数学の授業になるので割愛するぞ!)
・ポイント:
“爆速”を“きちんと制御できていること”が大事。
●TR(Transitions)
・要素と要素の間に入る“つなぎ”(Transiton)の動作。
・荒川静香さんのイナバウアーや、小塚崇彦選手やレイチェル・フラット選手に代表される演技中のスプレッドイーグルなど(総称して「MIF:Moves in the Field」と呼ぶ)はここに考慮される。それが音楽に合っているかは後半の項目でね。
・ただ両足でダラダラ滑ってるだけってのは当然ながら×。
・つなぎの動作に入るからって、簡単なターンばっかり入れるのは×。
・いくら得意だからって、同じ種類の難しいターンばっかり入れるのも×。
・ポイント:
複雑な、左右両方向のターンを、バリエーション豊かに入れることが大事。
●PE(Performance/Execution)
・演技力/遂行力。これだけじゃ何のこっちゃである。
・フィギュアスケートは多くの(時として1万人以上にもなる)観客の視線を、スケーターが最大4分間も独占する稀有な競技だが、結局のところ採点するのはジャッジ。選手はどちらかというとジャッジに対して「俺(私)を見ろォォォォォッ!」と訴えている。
・プログラムの見どころや「この場面でッ!自分はッ!こういうことを表現したいッッ!!」などなど、“訴えかける力”がPEという項目の主なところ。
・ただ、この項目の中に“空間の使い方”という項目もある。
・たとえば会場に
『フィギュアスケートに全く興味はなくて、ただ奥さんの付き添いでやってきた、演技中もワンセグで競馬ばかり見てるようなおっさん』がいたとして、ある選手の演技が始まった途端に「あれっ?この選手、すごいな…」と惹きつけられ目も離せなくなり、競馬そっちのけ、やったー神演技!おっさんスタオベ!
……となったら、PEのスコアが期待できるかも。
・ポイント:
その演技を見てグッとくるか、訴えかけてくるものがある、いわゆる演技の“説得力”。
すごく簡単に言えば\ドヤ!/力。
●CH(Choreography)
・振付。
フィギュアスケートは「振付師」にプログラムを頼む事も多く、その人達の腕の見せどころ。
・頼れるのは己の手足、あと表情!
小道具が使えない以上、体とリンク一面をフルに駆使して音楽やストーリーを表現しよう!
・てなわけで表情も重要なファクターになる。
極端な話、ドンヨリとした曲調なのに満面の笑みだったり、逆に明るい曲なのに鬼のような形相してたら変だね?
・ポイント:
流れている音楽に対して違和感のない、シチュエーションに合った動きや表情をしていること。
上記のPE、下記のINともよく絡んでくる。
●IN(Interpretation)
・音楽との調和。
・ジャッジによって解釈が分かれやすい部分。
個人の性格や出身地のお国柄、それに世情。そういったものが反映されやすい。
にんげんだもの。
・たとえば高橋大輔選手の『ブルース・フォー・クルック』。
日本の岡部由起子さん(解説者としても活躍中)は、音楽と少しズレている部分が気になったのに対して、アメリカのジャッジは「それがいい、それこそがブルースだ」と大絶賛だったそうな(月刊Piano2014/2月号より)
・その岡部さんが、解説中に「曲がBGMになってますね〜」と言うことがある。そういうのは、INとしてはよろしくない。それがステップ中ならGOE的にもよろしくない。
・ポイント:
上記の通り、曲との一体感が大事。まるでスケーターの体から音楽が奏でられるような、体の動きの一つ一つが細かい音をこぼさず拾って、全てが意味のあるものとなる。それが理想のInterpretation。
アイスダンスではこの項目に「Timing」も含まれるほど、リズムとの一体感が重要なキーとなる。
----------
■減点となる項目(Deductions)
・転倒:
まあ、そりゃそうか。
なお、転倒の定義は尻餅をついた……ではなく
「体の大部分をエッジ以外の場所で支えてしまった時」。
・タイムオーバー:
ショートなら2分50秒、フリーなら4分ないしは4分半±10秒を1秒でもオーバーするとアウト。
会場に行くと、大型モニタの右下に時間が映されている。
因みにカウントの開始は曲の頭ではなく、体が動き出してから。
・衣装の違反:
因みに男子の場合であればノースリーブは×。ボトムスも長ズボンが義務。
女子は過度な肌の露出は×。タイツを履くことが義務付けられている。
他にも実はいろいろ、衣装に関する規定もされている。
切れ端やパーツ(羽やファーなど)がリンクに落ちてしまうのもアウト。
・音楽の違反:
ボーカルのある曲を使った。
ア〜〜〜〜やただのハミングなど、歌詞の意味がわからなければセーフ。
・リフトのタイムオーバー(アイスダンスのみ):
転倒が少ないアイスダンスで最も多い減点ケースがこれ。
ショートリフトで6秒、ロングリフトで12秒。それを0.1秒でもオーバーするとアウト。
・他にも色々減点要素があるが、レアケースなのでとりあえずこれだけ。
----------
Q.コケて演技構成点にダイレクト響く選手、そんなに響かない選手がいるのはどうして?
A.「コケ方が上手いから!!」
転倒すると、起き上がって曲に追いつく為に、どうしても本来予定されていたつなぎや振付が抜けてしまう。スタミナも奪われ、特に曲の後半は色々と(特に\ドヤ!/力が)お座なりになってしまいがち。
コケ方が上手い選手は即座に起き上がり、すぐにトップスピードに持って行って、何事もなかったかのように追いつく。そういう違い。
「転倒も含めて演技では?」と思ってしまうくらいコケ方が鮮やかな選手もいたりする。
----------
こんな文章を読んで、もしもっと詳しいルールを知りたくなったら……
日本スケート連盟のサイトに様々な資料が置いてあるので、そちらにも目を通していただければ。
奥が深い世界です。
http://www.jsfresults.com/data/data_fs010.htm
┌ 技術点 ┐
要素の基礎点±GOE + 演技構成点 − 減点 = そのセグメントの合計得点
ショートプログラム(2分50秒以内:ジャンプ3個、スピン3個、ステップ1個)
フリースケーティング(男子4分30±10秒程度:ジャンプ8個、スピン3個、ステップ1個、コレオシークエンス1個)
(女子4分±10秒程度:ジャンプ7個、ほかは男子と同じ)
の2つを演技し、その合計得点で最終的な順位を競う競技。
かつて「6.0システム」と言われていた採点の時代はその性質上、5位の選手が逆転優勝という事はほぼ有り得なかったが、現在の採点システムでは得点差次第でひっくり返ることはままある。
実際、今回男子の銅メダル争いはまさにそんな感じだった。13位までがメダルを狙えるって。
逆に、ショートの貯金が活きてフリーはギリギリ逃げ切って優勝というのも、これまでに何度もある。
■審判団
・いろいろ用語が出てくるけど後で解説。
・テクニカルパネル:
テクニカルコントローラーをリーダーとして、
テクニカルスペシャリスト、アシスタントテクニカルスペシャリストを加えた3人。
ジャンプの回転数や回転不足にエッジエラー、それとステップやスピンのレベルを判定する。
判定は基本的に3人の多数決による。
・ジャッジ:
まず全ての選手の出場国から選出されたジャッジから抽選で13人、
そこから更に抽選でショートプログラムを担当するジャッジ9人が決まる。フリーでは、ショートでジャッジをしたうちから5人がまたまた抽選で引き続き、残りは↑で漏れた4人が入る。
彼らはGOEやPCSを判定し、それぞれの項目で一番高い・低い得点をつけたものがカットされる。
残り7人分の平均点が、最終的なGOEあるいはPCSの得点となる。
試合によってはもっと少ない人数でやることもあるが、五輪は9人。ジャッジの名前は公表されるが、誰がどの得点をつけたかはランダムになる(個人攻撃を防止するため)。
・他:
計時係、様々な判定をするためのビデオを出すリプレイオペレーター、審判団をまとめるレフェリーもいて、合計すると約20人。中々の大所帯。
■技術点(Technical Elements Score)
・要素ごとに、難易度によって“基礎点(Base Value)”がある。
・ジャンプは、同じ回転数なら
アクセル>ルッツ>フリップ>ループ>サルコウ>トウループ
という事を覚えておけばOK。何の種類かはとりあえず解説者さんに任せておけばいいし、見分け方などに興味があれば検索すればいくらでも出てくるので、ここで敢えて説明する必要もない。
・男子の華といえば四回転。今のところトウループが主流で、数人の選手がサルコウを入れてくる。
・女子のトリプルアクセルはそりゃもう当然の事ながら難しいが、トリプルルッツにトリプルのコンビネーションジャンプも十二分に難しい。難しい分リスクは高いが基礎点も高いぞ!
・ショートもフリーも、後半にジャンプを跳ぶと基礎点が1.1倍になる。
・得意だからと言って、何度も“同じ種類”かつ“同じ回転数”のジャンプばかりやるのは×。
もう少し細かい規定はあるが、選手が様々な種類のジャンプを入れてくるのはこのせい。
・回転不足:
ジャンプの入りのカーブに対して回転が1/4〜1/2足りないと“Under Rotated”といって基礎点の0.7倍になる。
1/2以上足りないと“Down Grade”として本来の基礎点から1回転少ないぶんの点になる。
実況や解説が「綺麗に決まりました!」と言ってても、ちゃんと見たら足りないなんてことはよくあるので、あまりアテにしてはいけない。特に高難度の技になると、アテにならないことのほうが多い。
国際舞台の第一線で活躍していた解説者さんですら間違えるんだから、素人が見てもわからないのは当然だ!
・ステップやスピンには“レベル”という概念がある。
最高レベルは4(最低はB、『Basic』のB)で、一つの要素の中で“レベルが上がるファクター”をこなせばこなすほど得点も上がっていく。
例えばスピンだと、バックエントランスとかチェンジエッジとかポジションの変更とか色々あるけど、これも割愛。
ペアやアイスダンスではリフトなどにも設定されている。というかジャンプとコレオシークエンス以外は全部レベル要素だ。
・メディアでは「最高難度のレベル4を獲得しました」とはよく言われるものの、
五輪に出てくるようなレベルの選手なら、ほぼ全員がレベル4を狙う構成にしている。なめたらアカン。だから色々細かい規定はあるけど、レベル4じゃなかったら「何かしら取りこぼしちまった」と思っていい。
※補足:
ただし、スピンの中でもレイバックスピンはレベルを取るのが難しく、特に腰や背中に故障を抱えていたり、体が元々硬くて難しいポジションが不可能な選手は、レベル3を前提とした構成で来ることも。
それでも巧みなエッジワークでレベル4を取る選手もいる。
・コレオシークエンスは「自由に音楽を表現する要素」。基礎点が固定で、GOE(後述)で点数が決まる。
女子はスパイラルを入れることが必須。
■GOE(Grade Of Execution)
・技の“出来栄え”を示すもの。その名の通り、技の出来如何で加減点される。
・+3〜0〜−3まで7段階あるが、別に+3がついたから即得点が3点プラスされるわけでもない。
要素ごとに係数が設定されている。細かいところは割愛だ。
・プラスになる要素:
高さや幅が十分、音楽構造に合っている、着氷が十分に流れている、入りや出が工夫されてる、
難しいターンやつなぎから入っている、独創的……などなど、色々あるけれど。
・とりあえずジャンプなら\ドーーーーーン!!/などという効果音をつけたくなったら良いジャンプだし、音が消えてブレイクした時にジャンプをピッタリ着氷したら超カッコイイし、たとえばリストの「愛の夢」でチャラチャラチャラチャラと音が降りていくとこでスピンしてたら綺麗だよね!
そんな感じで大体合ってる! 細かいところは気にするな!
・「他に真似できる人がいないほどにブッ飛んだ独創性」は高評価を受けやすい。
・マイナスになる要素:
転倒したり着氷が乱れたり。こちらにも色々ファクターは設定されているし、
その程度によっても減点の幅は様々だがやっぱりここでは割愛だ。
見た目明らかに「んあっ!?」と思ったらGOEがマイナスされる、それだけ覚えておけばいい。
・ジャンプを見た目とても綺麗に着氷したのに後から見てGOEがマイナスされていたら、
「そのジャッジの角度から見た時に回転が足りていたか微妙だった」
くらいの認識でいれば大体間違いはない。もしくは……↓
・ジャンプのうち、フリップとルッツには“エッジエラー”という可能性が潜んでいる。
右足でトウ(つま先)を突くのは同じだが、踏切の左足がインエッジなのがフリップ、逆にアウトエッジになっているのがルッツ。それが逆になってたら“Wrong Edge”だ。
程度によっても異なるが、それでもGOEがマイナスになる“かもしれない”。
“かもしれない”というのがミソ。
※注意!
「3回転●●の予定が2回転になってしまいました」と解説の方が仰る事もよくあるが、この予定がミスったからと言ってもGOEが必ずマイナスになるわけではない。
きちんと音楽に合ってたり綺麗に着氷が流れてたりすれば、プラスがつくことはよくある話。
(ショートプログラムでは規定があって、その回転数に満たなかったらGOEは-3固定)
ただ基礎点レベルでガクッと落ちてしまうので、「やったらあかん!」ミスにはなる。
※注意!その2
レベル要素の場合は、実際に取ったレベルとGOEは必ずしも一致しない。
明らかにヘロヘロでもレベル4はよくあるし(勿論GOEは渋いぞ!)
めっちゃ綺麗でもよく見たらポジションが甘くてレベル1や2…なんてこともよくある(加点はもらえる)
■演技構成点(Program Compornents Score)
・よくテレビ番組なんかでは“表現力”と言われるけど、割と……というか実はかなり語弊がある。
・実際は表現力と含めて、“技術点で表せない、要素以外の技術の部分”も一緒に明示化したものと言ったほうが良い。
・SS、TR、PE、CH、INの5項目で表される。それぞれ10点満点で0.25刻み。
・フリーではPCSの係数が2倍に。
・女子の場合はx0.8される(フリーでは最終的な計算はx1.6)。そうしないと、技術点よりも演技構成点の比重がドーンと高くなっちゃうので。
・ペアとアイスダンスの場合は項目によって係数が様々。
----------
●SS(Skating Skills)
・読んで字の如く、“滑走そのものの技術”。
・滑走するスピードもさることながら…
・何よりそのスピードをきちんと“コントロール”できているが大事(←とても重要!)
その選手が出せる最大のスピードを、きちんと制御すること。せっかく爆速で滑走してても、暴走して肝心の技を失敗したら意味がないのだ。
・片足で滑っている時間が長く、前進や後進をバランスよく滑っているほうが好ましい。
得意だから同じものをいっぱいやる(逆に苦手だからやらない)というのは良くない。
・スピードを出すための助走動作(“漕ぐ”と表現されることも)が少ないほうが良いなんて論調もある。
ある観点でそれは正しい(少ない漕ぎ数でスピードを出せるなら良い事だ)けど、ちと語弊がある。漕ぎが少なかったとしても、スピードが出てなかったらあんまり意味がないし。勿論、少ない助走動作で爆速が出せるならとても良いことだ。
・「スピードなんて言われてもテレビじゃよくわかんねーよ!」と思ったら、選手の背景やフェンスが流れる速度を見ていればわかってくるかもしれない。
・フィギュアスケートの原点はなんといっても“巧みなエッジ使い”。
よーく靴を傾けて膝を柔らかく使い、ディープエッジで滑走するのは技術が高い証拠。ウットリしよう。
(詳しく解説すると遠心力やら角度やら、突然数学の授業になるので割愛するぞ!)
・ポイント:
“爆速”を“きちんと制御できていること”が大事。
●TR(Transitions)
・要素と要素の間に入る“つなぎ”(Transiton)の動作。
・荒川静香さんのイナバウアーや、小塚崇彦選手やレイチェル・フラット選手に代表される演技中のスプレッドイーグルなど(総称して「MIF:Moves in the Field」と呼ぶ)はここに考慮される。それが音楽に合っているかは後半の項目でね。
・ただ両足でダラダラ滑ってるだけってのは当然ながら×。
・つなぎの動作に入るからって、簡単なターンばっかり入れるのは×。
・いくら得意だからって、同じ種類の難しいターンばっかり入れるのも×。
・ポイント:
複雑な、左右両方向のターンを、バリエーション豊かに入れることが大事。
●PE(Performance/Execution)
・演技力/遂行力。これだけじゃ何のこっちゃである。
・フィギュアスケートは多くの(時として1万人以上にもなる)観客の視線を、スケーターが最大4分間も独占する稀有な競技だが、結局のところ採点するのはジャッジ。選手はどちらかというとジャッジに対して「俺(私)を見ろォォォォォッ!」と訴えている。
・プログラムの見どころや「この場面でッ!自分はッ!こういうことを表現したいッッ!!」などなど、“訴えかける力”がPEという項目の主なところ。
・ただ、この項目の中に“空間の使い方”という項目もある。
・たとえば会場に
『フィギュアスケートに全く興味はなくて、ただ奥さんの付き添いでやってきた、演技中もワンセグで競馬ばかり見てるようなおっさん』がいたとして、ある選手の演技が始まった途端に「あれっ?この選手、すごいな…」と惹きつけられ目も離せなくなり、競馬そっちのけ、やったー神演技!おっさんスタオベ!
……となったら、PEのスコアが期待できるかも。
・ポイント:
その演技を見てグッとくるか、訴えかけてくるものがある、いわゆる演技の“説得力”。
すごく簡単に言えば\ドヤ!/力。
●CH(Choreography)
・振付。
フィギュアスケートは「振付師」にプログラムを頼む事も多く、その人達の腕の見せどころ。
・頼れるのは己の手足、あと表情!
小道具が使えない以上、体とリンク一面をフルに駆使して音楽やストーリーを表現しよう!
・てなわけで表情も重要なファクターになる。
極端な話、ドンヨリとした曲調なのに満面の笑みだったり、逆に明るい曲なのに鬼のような形相してたら変だね?
・ポイント:
流れている音楽に対して違和感のない、シチュエーションに合った動きや表情をしていること。
上記のPE、下記のINともよく絡んでくる。
●IN(Interpretation)
・音楽との調和。
・ジャッジによって解釈が分かれやすい部分。
個人の性格や出身地のお国柄、それに世情。そういったものが反映されやすい。
にんげんだもの。
・たとえば高橋大輔選手の『ブルース・フォー・クルック』。
日本の岡部由起子さん(解説者としても活躍中)は、音楽と少しズレている部分が気になったのに対して、アメリカのジャッジは「それがいい、それこそがブルースだ」と大絶賛だったそうな(月刊Piano2014/2月号より)
・その岡部さんが、解説中に「曲がBGMになってますね〜」と言うことがある。そういうのは、INとしてはよろしくない。それがステップ中ならGOE的にもよろしくない。
・ポイント:
上記の通り、曲との一体感が大事。まるでスケーターの体から音楽が奏でられるような、体の動きの一つ一つが細かい音をこぼさず拾って、全てが意味のあるものとなる。それが理想のInterpretation。
アイスダンスではこの項目に「Timing」も含まれるほど、リズムとの一体感が重要なキーとなる。
----------
■減点となる項目(Deductions)
・転倒:
まあ、そりゃそうか。
なお、転倒の定義は尻餅をついた……ではなく
「体の大部分をエッジ以外の場所で支えてしまった時」。
・タイムオーバー:
ショートなら2分50秒、フリーなら4分ないしは4分半±10秒を1秒でもオーバーするとアウト。
会場に行くと、大型モニタの右下に時間が映されている。
因みにカウントの開始は曲の頭ではなく、体が動き出してから。
・衣装の違反:
因みに男子の場合であればノースリーブは×。ボトムスも長ズボンが義務。
女子は過度な肌の露出は×。タイツを履くことが義務付けられている。
他にも実はいろいろ、衣装に関する規定もされている。
切れ端やパーツ(羽やファーなど)がリンクに落ちてしまうのもアウト。
・音楽の違反:
ボーカルのある曲を使った。
ア〜〜〜〜やただのハミングなど、歌詞の意味がわからなければセーフ。
・リフトのタイムオーバー(アイスダンスのみ):
転倒が少ないアイスダンスで最も多い減点ケースがこれ。
ショートリフトで6秒、ロングリフトで12秒。それを0.1秒でもオーバーするとアウト。
・他にも色々減点要素があるが、レアケースなのでとりあえずこれだけ。
----------
Q.コケて演技構成点にダイレクト響く選手、そんなに響かない選手がいるのはどうして?
A.「コケ方が上手いから!!」
転倒すると、起き上がって曲に追いつく為に、どうしても本来予定されていたつなぎや振付が抜けてしまう。スタミナも奪われ、特に曲の後半は色々と(特に\ドヤ!/力が)お座なりになってしまいがち。
コケ方が上手い選手は即座に起き上がり、すぐにトップスピードに持って行って、何事もなかったかのように追いつく。そういう違い。
「転倒も含めて演技では?」と思ってしまうくらいコケ方が鮮やかな選手もいたりする。
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こんな文章を読んで、もしもっと詳しいルールを知りたくなったら……
日本スケート連盟のサイトに様々な資料が置いてあるので、そちらにも目を通していただければ。
奥が深い世界です。
http://www.jsfresults.com/data/data_fs010.htm